源暑


じりじりと 注ぐ日差しが
空気の密度を上げてゆく
風は 重くなり
やがて止んでしまうだろう

満潮の凪
世界は じめじめと
重く 密度を増す

連なる朱に 果てがないという幻
見上げれば白 清純なる神聖の世界
こーん と どこからとも知れず
響くかのように 澄んだ空気
遙か太古は どこへ埋もれた?

しずしずと 静粛に厳粛に
列をなし 進む「時」
柄杓で掬った 神酒を撒いて
祓い清めば 風が湧く

こーん と 響き渡るように
一陣の風が吹き抜け
世界はまた 重く湿った空気に埋もれる

満潮の凪
響き渡る 清音さえ
飲み込むように 押し留め

涼やかなる 神酒の溜まりに
微かに小さな 足音一つ



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