一歩




あのとき
ゆっくり ゆっくり
私は うまれた


それまで私は
地球が絶えず回るように
世の中は 勝手に流れ続けて
私も その流れに乗って
生きてゆくのだと思った

けれど その時
やっとわかった


地球が回ろうと
世の中が流れようと
私というものはただ
私でしかない

流されただけだと思っていた道も
本当は 自分の足で歩いていたのだ

世の中にありながら
私はただ 孤立した
ひとつの存在でしかない


あの
本当の意味での誕生の時に
私はやっと そのことに気付いた

私はやっと
自分自身から世界に目を向けた



なんてきれいだろう と
見上げた空からは
絶えず 光が射す





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