情景



差し出した この手は
風にさえなれずに
行き着く場所など どこにもなかった

ここにだけ つぶやく弱音
貝のように閉じた口が開いたとき
出てくるものが 唄ならばいい
そんなことを 夢見たままで

こんなにも些細なことで
あなたを思い出すのだと打ち明けたら
きっとあなたは 困るのでしょうね

口実がなさ過ぎて
憧れには 手を伸ばせない

その影を ただ 追おうとして
一瞬 足が竦む

どうか 振り向かないで
その 想いの矛盾も
ただ 私の身勝手

言葉に羽根があるのなら
未来永劫 口をつぐもう
ただ 目指すために
あなたを見るから
こんな弱音は 地に埋まる方が良い

ただそうして 風に乗らないように
風に運ばれないように
気をつけながら 怖がりながら

ぽろり ぽろり と ここにだけ
取り零すように つぶやく弱音

あなたにだけは 聞こえないといい
まだ これから先の未来でも
私があなたを 追って行けるように



戻る