この夏のように 煮え切らない思い
この風のように 踏み出せない一歩



私は 活字を漁る
 強い言葉に出会えたら強くなれるかもしれない

私は 活字を漁る
 優しい言葉が染み込んだら優しくなれるかもしれない

私は 活字を漁る
 希望の言葉が見つかれば幸福になれるかもしれない

私は 活字を漁る
 そうして私は何もかもを詰め込んだ「からっぽ」になる



実り


今朝、道の真ん中に、
橙色の柿が一つ、
ころんと落ちていた。

潰してしまうのが嫌で、
タイヤの間を通るように、
ハンドルを調節して進むと、
ころころと、転がる気配がした気がして、
バックミラーを見ると、

全身橙色の小さな子が
たかたかと、後ろに駆けて行った。

灰色の空が、茜色に染まる様子に似ていて、
今日は、夕方までには、晴れるだろうと思った。



あぁ、だって私は、
そんな辛い思いはできないよ。
そんなに、辛く思うことはできないよ。

そんなにも、辛くなってしまったら、
きっと、この胸が弾けてしまう。
そうしたら、ここにそっと閉まってある、
飲み込んだ想いが、飛び出すでしょう?

そんなことは、できないよ。

だって私は、口に出さないことを選んだのだから。
できないよ。私にはできない。

あぁ、だからどうか、このまま、
この胸に、鈍い重りだけを付けて、
そんなに、張り裂けるほどの、
辛い思いはさせないでおくれ。



ざわりと 空の色が変わった
空気の 手触りが変わった
風の 温度が変わった
見つめる 視線の高さを変えて



何度も 何度も 夢見よう
午後の陽射しの物語
何度も 何度も 夢見よう
穏やかに過ぎるあの時を



冷たい雨の合間に
暖かい 日が射したから
また もうちょっと
やさしくなろうね



くるくるくるくる めまぐるしく
僕らの世界は 廻ってる
くるくるくるくる いつまでも
僕らは世界を巡ってる



はじめよう はじめよう はじめよう
ここから いまから 私から
未来へ旅立つ この世界に
片手を置いて まっすぐ立って



すごい人に、お世話になって、
助かって、嬉しくて、やっぱり敵わなくって、
ぎゅぅうっと縮んで、丸まって眠った。
明日はもっと、強くなぁれ。
明日はもっと、すごくなぁれ。
明日はもっと、大人になれ…

…何もいらないとまでは、まだ言えないまま。





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