********** ざらざらのコンクリートに、 汚れた黒板消しを押しつけたような、 掠れた光の中に、彼は居た。 こんばんは、オジョウサン。 こんな所まで、お越しいただくなんて。 ワタクシなど… ざらつくような、灰色に近い光の中で、 彼は、目を細めて私を見つめた。 言葉が出なくて、もどかしくて、 私は、何もできないまま、 その場に立って震えていた。 すぅうっと、影を引き延ばすようにして、 彼が私に近づく。 引き延ばされた影が、膜を張るように、 彼の姿が、薄れる。 けれど私は、何もできず、 彼は、そっと私に手を伸ばし、 最期に、触れた手を残して… **********