『冒険者』と呼ばれる生き方をする者達がいた。
彼ら6人もそんな者達だった。
彼らは数々の苦難を共にし、一つの森のそばに辿り着いた。
彼らは、一時的に目的を失っていた。
「少し疲れたな。」
一人の男がいった。
プラチナ色の長く美しい髪を後ろで束ね、長い耳を持った美しい男だった。
純血のエルフであることは、誰の目にも明らかだ。
男の瞳は、エメラルドのように澄み、輝きながら、どこかけだるそうだった。
「ホームシックか?エルフはちょうど、こんな森を好んで住処にするからな。」
水袋に入れたワインを大切そうに飲みながら、背の低いがっしりした体躯の男、
屈強の戦士といった風体のドワーフが、からかうようにいった。
美しいエルフは、苦笑でその返事をし、小さなため息を微かに漏らした。
「この森は、優しい感じがする…」
小柄な少女が呟く。
少し尖った耳に、艶やかな黒髪、暗色の瞳を持つハーフエルフの少女は、
知るはずのない先祖の楽園を思い浮かべているのか、静かに瞳を閉じていた。
「皆、なにしんみりしてるのさ。つまんないじゃないか。」
ライトブラウンの癖っ毛に、同じ色の瞳、少し長めの耳を持った
元気そうな明るい少年が不平を漏らす。
グラスランナーの彼は、愛用のリュートを片手で弄び、頬杖をついて仲間を見渡した。
「おまえは、少し静かにすることも覚えた方がいいんじゃないのか?」
いくらか癖のある黒髪を短く切り、何カ所も細かい傷の付いた金属鎧を着た若い男が
干し肉をかじりながらいった。
その隣で、純白の神官服を着た大地母神の神官の少女が、
真っ直ぐにのびた金髪を微かに揺らし、くすくすと笑った。
「だって、つまんないんだもん。」
頬を膨らませ、グラスランナーが反論する。
だが彼は、その種族の特性とも、彼の生来の長所とも言える明るさと陽気さで、
すぐに笑うと、仲間達に声をかけた。
「こんな時は、踊るのが一番だよ!ねっ!」
そういって、彼は、リュートをかき鳴らしながらステップを踏む。
ハーフエルフが笑って立ち上がり、それに加わると、小さな踊りの輪ができる。
ドワーフは杯のワインを飲み干し、エルフに差し出す。
エルフは微笑してそれを受け取り、酒を酌み交わす。
神官の少女は、小さな踊りの輪をまぶしそうに見つめ、男に微笑みかけた。
こんな夢のような時間が途切れる時が来るなどと、どうして考えられるだろう。
男はそう思いながらも、かつて想像もできないほど大きな魔法の力で、栄華を極めた
古代の国さえ滅びたこの世界で、永遠などありはしないのだと、自分に言い聞かせていた。
月の光が静かに降り注ぐ、小さな森の側での、穏やかな一夜だった………