さくらのルームミスト
なる物を買った。
紅茶を飲むのに楽で愛用していた、
球形の茶こしをなくしてしまい、
新しい物を買いに行った雑貨屋で、
薄桃色の誘惑に抗いきれず、
つい、衝動買いをした。
まだ、冬の雪も堪能しきっていないのにな…
と、苦笑しながら。
フレグランスなんてものを常用するマメさはなく、
かといって、慣れないものを気にしない、
というほどに鈍くはなかったようで、
実際に使ってみると、案外強いその香りに、
思わず顔をしかめたりしたのだけれど。
やっぱり、薄桃色の、
春の期待はなくならなくて、
ふと思いついては、シュ、シュ、
と、まき散らして、また思わず、
鼻から空気を吐き出している。
春のイミテーション。
なんとなく、嬉しくなるためだけの、
なんとなく、期待するだけの、
薄桃色の、春の幻想。
ころころと、瓶を手の内で弄んで、
その色合いに、
やっぱり惹かれ続けている。