〜抱えきれない日常と両手に余る安らぎと…


「よくある事故です。」

そういって、作ったオムレツが崩れたことを伝えた。

「ちなみに具は挽肉とタマネギです。」

そうやって、茶色い部分は決して焦がしたのではないことをアピ−ルした。

他愛のない話。
独り言を一言言って、忘れてしまってもいいくらいに。
伝える必要なんて、見つけようもないくらい。
なんでもないこと。

エプロンをつける手間さえ省いて。
簡単に、夕食を作って。
最低限。本当に最低限だけの家事をしながら。
一人で、家の中で、他愛のない話を、あなたに投げる。

返事は、来ない。
私も、返事が来ないことを、何とも思わない。
そのまま、その日が終わっても、何も思わない。
送ったまま、忘れてしまうかのように。
そのくらい、他愛のない話。

他愛のない、ちょっと笑えそうな話を、
あなたに投げ続ける。
後で、話題にのぼらなければ、
あなたがそれを受け取ったのかどうかもわからない。
そのまま、忘れてしまうくらいに、他愛のない話。

それでも、ふと、思いだしたかのように、
あなたは、その話を私に投げ返す。
全ての悲観が溶けて、消えて、心がふわりと温まる。
それもまた、他愛のない話。



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