…誰かに、呼ばれている………
頭の中に、私の名前が響く…
呼ばれている………
………誰が?
ふらふらと、彷徨いながら、
脳内にひびく名を、消す術もなく、
不思議と、夢心地で…
呼ばれている。
………………誰が?
覚えのある名前。
生まれてからずっと、持っていた。
でも、不思議なほどに、なじみのない名前…
私の、名前…
私の名前が、繰り返される。
呼んでいる…
………………………誰を?
それは本当に、私を特定しうるものだろうか?
こんなにもつかみ所がなく、
ふらふらと、彷徨うだけの存在を、
特定するものなどあるだろうか?
頭の中に、ただ、音が響き続ける…
呼んでいる…のではない………
ただ、繰り返される単語。
名前。
ただ一つの名が、彷徨う心に曖昧に響いて、
ふわふわと、不定形に漂い続けた…