〜ただ目の奥を過ぎる幻と…






あの日、見た夢。


なりたかった、あなた。
悔しかった、私。
私が私であることが、
私でしかないことが、
堪らなく悔しくて。

ただ泣きたいと、そう思っていた。



あの日、見た夢。

どこまで行っても、
あなたはあたしの前にいて、
どんなに走っても、
あたしにはあなたの
背中しか見えなくて。

その隣に立つことを、漠然と夢見ていた。



あの日、見た夢。

ただ追いつこうとするだけでは、
必死に走っても、一歩手前で、
足が止まってしまいそうで、
俺なんかに、敵うはずがないと、
それはわかっていたけれど。

追い越したいと、覚悟を決めた。



あの日、見た夢。

あなたが、微笑んだ。
ボクは、それでも進む。
その瞳が、穏やかで、
向けられた先はボクじゃないのに、
背を押すように、あたたかいから。

あなたがいなくなっても、
ボクは、あなたを目指している。



あの日、見た夢。

今も消えない、あなたの面影。
今でも浮かぶ、その背と瞳…





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