〜夢幻の世界へ、かの地から…


照りつける日差しは眩しくて、
空気は、熱を持っていたけれど、
それは、不思議と柔らかくて、
風が、軽いのが心地よかった。

さらさらと、流れるように。
全てがほどかれている世界で、
目の前を、無数の幻が通り過ぎる。

いくつもの無限の異世界が、
広がっているようだと。
そんな、白昼夢のような、
不思議な夢見心地の中で。
あたしの心も、ほどかれてゆくのだとわかった。

木々の緑と、空の青と、
日差しの、優しい、
ほんの少しオレンジの混ざった白と。
その色の、鮮烈さは、あまり変わらなかったけれど。
ここは、全てが、広くて優しい。

過ぎ去る幻は、誰かの心。
そんな感覚も、また、真夏の幻かもしれないけれど。
不思議に、自然に、全てが直接心に響くようで。

「ありがとうございます。」

周りの人たちに、訝しがられるのが恥ずかしくて、
うつむくように、小さく頭を下げた。

ありがとうございます。

この場所が、こうしてあること。
ここに、来ることができたこと。
あたしという存在があること。

あなた達が、いたこと。
全てに………



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