〜寒空の熱と刹那の自問…


その日は朝から、
冬の砂埃でも飲み込んでしまったかのように、
ちりちりと、喉が痛かった。

頭の中で、何かが脳みそを締め付ける。
おしくらまんじゅうの要領で、
ぎゅっと、抱え込まれた脳みそは、
なんだが、ぽかぽかと暖かい。

他愛ない約束は、断ろうかとも思ったけれど、
そう多く機会のある相手でもなかったので、
なんとなく、もったいないようにも思えたから、
無理をしないように気をつけようとだけ決めて出かけた。
蓄積されるように滲みる喉の痛みは、
風の音よりも耳障りに思えたから、
一度、軽く目を閉じて、風と外の音に意識を飛ばす。

「あの人はね…」
「あそこはね…」
「あれはね…それはね…」

冬の風の中で流れる景色には、
自分が何をしたのかを言い出す人はいないようで、
話半分以上のことは、流れてこない。

ぽふぽふと、寒さを防ぐ暖かな靴で、
冷たいアスファルトを踏みながら、
見るとはなしに、街を眺めて。

「そんなこといっている間に、
 少しでも進めそうなものなのにな…」

すれ違った風に、つぶやいたら、

ーじゃあ、あなたには、
 どれほどのことができているというの?ー

頭の中の誰かが、俺の脳みそを抱える腕に、
もう一度、ぎゅっと力を入れて、
嘲笑うように囁いた。



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