『その世界』
世を支配せんとする神がいた。 神といえど、絶対的な存在なわけではなかった。 神の作れるものは限られていて、 神の消せるものも限られていた。 例えば、人。 それは、神自身が作り出したものでありながらも、 それ自身が、神の手を離れ生きてゆくようにできていた。 神は人の存在そのものを消すこともできず、 その本質を作り替えることもできず、 生み出すことも、もうできなかった。 また、人の感情についても、 それは同じことだった。 人々の間に争いを起こそうと、 神は、世界を作り替えた。 建物を造り替え、 ビルを砦とし、 家々を集め基地を作った。 大地を作り替え、 それぞれの土地に、 他の土地の利権が関わるようにした。 知識を生み出し、認識をすり替え、 世界の勢力と、情勢、戦況を、 人々の脳に焼き付けた。 人の存在を消すほどの力を持たなかった神は、 その能力の及ぶ、ありとあらゆることをし、 神は、人へ挑戦した。 しかしそれでも、 人々は、変わらず生きた。