夢胡蝶






   ひらり と
 舞う幻は 過去の夢
   ふわり と
 舞い降りる あの時の

 そう あのお方の 微笑み…





「あの方を失い、あなたに拾われ、
 私は、あなたに幸福にしていただけるのだと思っておりました。」

あの時、逆光に遮られ見えなかった彼の顔。
今は、目が霞み見えない。

けれど、もういいのだ。
もう、私はいいのだ。



「でも、そうではなかった…
 結局、私は、あの時に、あの方を失ったあの時に
 何もかもを、失っていたのでしょう。」

振り返ると、少年は涙を流す。
何を悲しむことがあるだろう。
あなたは、失ったはずの大切なものを、
再び失わずに済んだというのに…

私は、微笑む。



霞む視界に、思い出す。
光の中に、今度こそ、
あの方の微笑み。
私のこの頬にあてられた、暖かな手。

やっと、あなたのもとへ参れます。
求め続けた、あなたのもとへ…





 ひらひらと 舞う夢
 ふわりと 昇る想い

 やっと 見ることのできた
 あなたが私に 微笑む幻…






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