********** 薄い色の光の中で、彼は、 昨夜去ったのと同じ格好に頭を垂れていた。 こんばんは。オジョウサン。 声の響きが、微かに違って、 一瞬、すっと背筋が寒くなったけれど、 それは、この世界と、元の世界との違いということだけなのだ、 ということはわかっていた。 どうされたのですか? こんな夜中に出ていらっしゃるなんて? 道化は、ゆっくりと私に近付き、 軽く首を傾げるようにしながら言った。 あぁ、やはりアナタには、 真っ白な、昼の光の方がお似合いだ。 こんな、真っ黒な真夜中に、 真夜中の国になんて、でてくるべきでは… 近付きながら、ゆっくりと手を差し伸ばし、 彼は私に話しかけた。 けれど、あぁ、 ここにアナタがいてくれたなら、 ワタクシは、どんなに… 道化の手が私の頬に触れ、 私は目を閉じた。 手を、彼の手に重ねようとして、 もう、時間切れなのだと気付いた。 **********