クラウン





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湿った空気を感じながら、
その晩私は窓を開けていた。

時々、月を横目で眺めながら。


どこかで流れていたニュースを、
上の空で聞いていたけれど、
天気予報だけは、覚えていた。

今夜は、晴れ、時々曇り。


結局一日、何一つ、手につかないままで、
何気ないふうを装おうとしながらも、
私は、彼を待っていた。

ちらちらと横目で月を眺めて、
窓の外に、誰もいないことを確認すると、
その度に、まだ曇るなと、願っていた。




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