クラウン





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「ねぇ、お嬢さん、
 空の色は、どうして青なのか、知っていますか?」


晴れた夜。
道化は、どこからともなくやってきては、
他愛ない話をして、笑いながら話をして、
いつとも知れず去っていた。


「光の屈折がどうとかって話?」


窓枠にもたれて、彼を見上げて、
のんびりと、半分くらいは上の空で、
夢見心地に会話を楽しむ。


「ふふふ…いいえ。」


道化は、いつも、楽しそうに笑う。


「昔の人が、
 あの色をアオと名付けたからですよ。」


真っ白な手袋をはめた、
すらりと伸びた手で、
白く光る月の横を、指差しながら。


「あぁ、今日も綺麗な空だ。
 明るい、真っ白な光の、碧い空だ。」


その頃には、私はもう、
すっかりこの時間が気に入っていて、

普通なら、馬鹿にしているとも思えるような、
道化の、悪戯めいた他愛ない話を、
いつも笑って聞いていた。


そして、白い光の月を見る彼の目に、
悲哀の色が隠っていることにも、
私は気付き始めていた。




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