***** 「ねぇ、随分、細くなってきたと思いませんか?」 夜空に浮かんだ月を指さして、彼が言った。 「きっと、もうすぐ、 私は消えてしまいますよ。」 夜毎、窓辺に、二人並んで。 「そうして、また、あの、 真っ黒な…」 声が、悲痛な響きを含んで、 私は、道化の手をぎゅっと握った。 「うん。でも、まだ、 月は明るいよ…」 彼の顔を見ることは、できなかった。 *****