***** 「えぇ…」 彼は言い淀んだ。 視線だけで、言葉を促した私は、 彼に酷いことをしただろうか。 「ここは、まだ、明るいでしょう。」 いつものように、窓辺に座った道化が、 私を見下ろす。 「ここは、いつまでも、 …明るいでしょう。」 唇を噛んで、俯く。 しばらく黙り込むと、 夜風は、音を立てて流れた。 「………全く、 一体、誰なのでしょうね。」 風の音に促されるように、 道化が、私に向き直って言う。 「昼と夜なんて区別を、 最初に作ったのは。 そんなものなければ、私だって、 ここにいられたかもしれないのに。」 喉につかえるもの全てを、飲み込むように、 少し笑って、彼は言った。 *****