クラウン





   *****




「えぇ…」


彼は言い淀んだ。

視線だけで、言葉を促した私は、
彼に酷いことをしただろうか。


「ここは、まだ、明るいでしょう。」


いつものように、窓辺に座った道化が、
私を見下ろす。


「ここは、いつまでも、
 …明るいでしょう。」


唇を噛んで、俯く。
しばらく黙り込むと、
夜風は、音を立てて流れた。


「………全く、
 一体、誰なのでしょうね。」


風の音に促されるように、
道化が、私に向き直って言う。


「昼と夜なんて区別を、
 最初に作ったのは。
 そんなものなければ、私だって、
 ここにいられたかもしれないのに。」


喉につかえるもの全てを、飲み込むように、
少し笑って、彼は言った。




   *****











20≪ ≫22
戻る