クラウン





   *****




月は、極限まで細くなり、
オレンジに近い黄色で、
張り付くように、夜空に浮かんでいた。


彼は、いつもの所から立ち上がると、
振り返らずに、月を見上げたまま、

「もう、消えてしまう。」

と、つぶやいた。


その声は、ひどく小さくて、
すぐに夜風に乗って、流れてしまった。




   *****











21≪ ≫23
戻る