***** 月は、極限まで細くなり、 オレンジに近い黄色で、 張り付くように、夜空に浮かんでいた。 彼は、いつもの所から立ち上がると、 振り返らずに、月を見上げたまま、 「もう、消えてしまう。」 と、つぶやいた。 その声は、ひどく小さくて、 すぐに夜風に乗って、流れてしまった。 *****