クラウン




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その日私は、冷たくなった秋の風にも構わずに、
窓を開け放して月を眺めていた。

何もする気になれず、ただ惚けたように、
真っ白な月を見ていた。

惹き付けられるように、
吸い寄せられるように…



「こんばんは。」

「…っ!?」


降って湧いたかのような声と、
その姿と、彼の立っていた位置
 ー何もない、虚空ー と。
全てに驚いて…


「お嬢さん。」

…驚いて、いるうちに、
無意識に月へと伸ばしていた私の手を取ると、
道化は、深々とお辞儀をするように恭しく、
手の甲に口づけをした。




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