クラウン
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「あぁ、申し訳ありません。
失礼なことを…
ご機嫌を損ねてしまいましたか?」
愉快な化粧を施した顔が、
真正面から覗き込んで、聞く。
目は弧を描いたままで、
その端には、うっすらと涙さえ浮かんで、
口元も、微かに痙攣するように動いて、
ちっとも悪びれた様子がない。
それどころか、どう見ても、
謝りながらも、笑いをこらえている。
手の甲にキスをした道化は、
そのまま私の手を手繰り寄せるように近付き、
私のすぐ脇、窓枠の端に、足を組んで腰を下ろした。
私が呆気にとられて眺めていると、
彼と目が合った。
彼が、くすくすと際限なく笑いだし、
堪えようとするのと、笑いの衝動とで、
呼吸困難になりかけたのは、そのすぐ後だった。
「一体、何なの?」
「いえ、ね。
あんまりおかしな…じゃなかった。
驚かれている様子だったので、つい、ね。」
言い直しても、取り繕えていない。
「じゃなくって、
あなた、なんなの?」
呆れ果てそうになりながら聞き直す。
「ピエロですよ。
ご覧の通り。」
思わず、ぴしゃんと窓を閉めた。
もちろん、ピエロがそこに座ったまま。
…さすがに、彼は避けたけれど。
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